防災×帽祭 ハットクリエイター 入澤恭子

帽子がつなぐ、ひとの想い。

防災×帽子。
一見すると、少し意外な組み合わせに聞こえるかもしれない。

けれどこのショーの現場には、
その違和感を超えて、人と人の想いが静かにつながっていく時間があった。

ショーに立つことはなく、
運営として、そして帽子に長く関わってきた一人として、
オーディションから本番までを支えていたいりさん。

モデルを選び、舞台を整え、
プロと未経験が交わる場を見つめながら、
そこに生まれていたのは
「ボランティアでもなく、仕事でもない」
レボリストならではの価値の循環だった。

帽子を通して交わされた視線や想いは、
舞台の上だけで完結するものではない。
人の記憶に残り、関係として続いていく。

その現場で、いりさんは何を感じ、
これから何を描こうとしているのか。
運営という立場から見えた、
もうひとつのショーの物語を聞いた。

Q:今回、いりさんはショーに出演されていたのですか?
いえ、ショーには出ていません。
完全に運営側として関わっていました。

Q:今回、帽子はいくつ制作されたのでしょうか?
4つ制作しました。

Q:どんな帽子を作られたんですか?
黒っぽいグレーの中折帽で、シフォンジョーゼットのマントのような布がついているもの。
それから、ブレードと呼ばれるピンクの紐をぐるぐる縫っていくデザインのもの。
ショッキングピンクのキャペリーヌ、そしてシルクハットっぽいシルエットの帽子です。

Q:はやとさんとの出会いは、レボリスト活動がきっかけですか?
レボリスト活動そのものというより、
声をかけてもらったところからですね。
「帽子×防災」のショーが始まる前から関わっていました。

Q:最初に「防災×帽子」と聞いた時、どう思いましたか?
正直、ダジャレだと思いました(笑)。

Q:今回はオーディションにも関わられていたんですよね?
はい。すべてのオーディションに関わりました。

Q:年齢層も幅広かったと聞きました。また、会場でのオーディションでしたか?
そうですね。
下は小学生からいて、中には泣いてしまうお子さんもいましたけど、頑張ってオーディションを受けていましたね。
全日程オンラインでのオーディションでした。1回だけ会場で行いました。

Q:実際にオーディションをしてみて、いかがでしたか?
正直、ショーの経験があまりないので、
モデルさんのウォーキングも分からないし、
「何を見たらいいんだろう?」というところから始まりました。

Q:では、どんなポイントを大切にして選ばれたんですか?
姿勢の良さもありますが、
それ以上に、レボリストの考え方に共感しているか、
モチベーションが合うかどうかを大事にしました。

レボリストの活動は、
ショーに出たら終わりではなく、ずっと続いていくものなので、
人間性をしっかり見せてもらいました。
おこがましいのですが。

Q:いりさんにとって、レボリストとはどんな存在ですか?
ボランティアではない、でも無償でもない。
価値あるもの同士の交換だと思っています。

お金ではなく、
「できる時に、人の役に立つ」という感覚で協力し合う。
それは条件ではなくて、
人が本能的に感じるものなんじゃないかなと思います。

Q:今回のショーで、その考え方は広がったと感じますか?
考え方が少し難しいんですが、
難しく考えすぎない方がいいとも思っています。

私は仕事として帽子を売っていますが、
ここでは帽子を売っているわけではない。
でも、帽子のためにはなっているかもしれない。

いつそれが帽子の価値につながるかは分からないけれど、
ショーでかぶってもらったり、歩いてもらったりするのを見ると、
やっぱり感動するんです。

Q:帽子デザイナー同士の関係性も深いんですよね。
はい。
今回帽子を作ったデザイナーさんたちは、
20年以上付き合いのある仲間ばかりです。

その人たちが作った帽子を、
モデルさんがかぶって、ショーに出ているのを見ると、
やっぱり胸にくるものがありますね。

Q:ショー全体の演出についてはどう感じましたか?
デジタルサイネージもすごく良かったです。
帽子デザイナーに注目が集まる機会があるのは、
本当にありがたいなと思います。

Q:ショーの前後で、ご自身の変化はありましたか?
今回が4回目のショーで、私は3回の参加でした。
1回目、2回目は毎回本当に大変で…。

でも今回は、パニックにならずに対応できたし、
前回よりも、確実に良いものになっていると感じました。
回を重ねるごとに、良くなっていく感覚がありますね。

Q:今後、チャレンジしてみたいことはありますか?
自分が帽子を作るというより、
帽子デザイナーさんたちが、もっと脚光を浴びる場を作りたいです。

帽子をもっと良く魅せること、
ちゃんと注目されるシーンを考えていきたいですね。

Q:今回のショー全体を振り返っての感想を教えてください。
オーディションから事前にコミュニケーションが取れていた分、
前回よりも良いものになったと思います。

もっと上は目指せるし、
もっと完成度の高いものもできると思う。
でも、今回がダメだったわけではなくて、
できる中では最大限、ちゃんとできた。
すごく良いものになったと思っています。

Q:改善点を挙げるとしたら?
リハーサルができなかったことですね。

レボリスト活動は、
突発的なことに対応する力も大切なので、
リハーサルがない意味もあるとは思います。

でもショーは人に見せるもの。
お金をもらっていなくても、エンターテイメントなので、
やっぱりリハーサルはできた方がいいな、と思っています。

取材を終えて

取材を通して強く感じたのは、
いりさんが語る一つひとつの言葉に、無理がまったくなかったことでした。

「わからなかった」「迷いはある」
そんな正直な言葉も隠さずに話してくださる姿勢が、
レボリストの活動そのものを表しているように感じます。

帽子を“売る”場ではない。
けれど、帽子を通して人が出会い、感情が動き、
誰かの記憶に残る瞬間が確かに生まれていた。
その価値を、いりさん自身が一番まっすぐに受け止めていました。

オーディションで見ていたのは技術や経験だけではなく、
姿勢や考え方、人としての在り方。
「ショーで終わらない関係」を見据えて人と向き合っているからこそ、
その言葉には重みがあり、あたたかさがありました。

完成度への反省も、手応えも、
どちらも同時に抱えながら、
「次はもっと良くできる」と自然に口にする姿が印象的でした。

帽子が主役でありながら、
主役はいつも“人”。
このショーが大切にしている本質を、
いりさんの言葉を通して、改めて感じる取材となりました。

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